染め職人:天野紺屋 五代目

天野 尚さん

天野紺屋染め職人
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藍と愛 染め職人

1980年生まれ38歳 安来市広瀬町、月山富田城の城下町。
格子窓の残る風情ある町並みに、藍染の老舗天野紺屋はある。
文献はあまり残っていないので、定かではないというが、江戸末期から明治の初めの創業という。

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150年近く糸染め紺屋を生業としている。
間口は2間あまり、ずーっと奥に長く続く町屋。
母屋を抜けてゆくと、染め工房、藍釜が埋められた染め場、奥には相当年季の入った織り機が並んでいる。

天野 尚さん、藍色木綿のもんぺ、頭に藍染めの手ぬぐいを巻いて、染め場に立つ姿は、「カッコイイー」のひとこと。
身長は180cm以上、がっちりとした姿は、ワイルドそのもの。

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入り口の店頭に、天野さんの大きなポスターが張ってある。
レクサスとコラボした匠プロジェクト、全国各県一人選ばれてポスターになっている。
匠はそれぞれに道具を持って撮影された。
天野さんは、何も持っていない。彼の手が最大の道具。
右手を胸に、左手を顔半分前に。大きく開いた指先は、きれいな藍色に染まっている。
「カッコイイー」
またまたである。

藍釜のふたを開けてもらった。
植物の発酵した香り、紫がかった少し粘り気のありそうな液体。藍の花が咲いている。
わかりますか? 藍の花。
発酵した藍の上に紫色のアジサイの花が咲いているように、丸い塊がふわりと浮いています。
触らせてもらいました。
私の指に紫の泡がしっかりつきました。 藍は生き物でした。

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藍は植物の葉を乾燥させて作ります。
普通、葉っぱが枯れると茶色ですよね。
藍は薄いブルーなんです。
腐葉土のように、水をかけて発酵させると、すくもが出来上がる。
色々なやり方があるそうだが、天野紺屋では、75度の湯ですくもを溶かして染色液を作る。
その後は、温度管理が大切、舌でなめて状態を見るという。

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師匠であるおじいちゃん、天野 圭さんは名人。
藍釜の周りに床暖房のように温水パイプをめぐらせたそうだ。
また、廃れて廃棄されそうな織り機などを集めて、織りを復活させた。
すごい人なんです。

天野 尚さん、紺屋の5代目。
子供のころから、おじいちゃんの働く姿を見て育ち、染め職人になることは、自然なことだった。
京都の短大で染色を学び、広瀬町でこれから師匠に学ぼうとした1年後、師匠が脳梗塞で倒れ、何も教えてもらえないまま、独学で家業を継いだ。
自分でも、いつかは逃げ出すのではないか、不安な日々。
しかし、天野さんには、藍と愛があった。

「自分は、人と何かを一緒にやることが苦手でね」
「紺屋の家業と藍があって、ほんとに幸せです」

5年あまり、いい色の藍を作る模索の日々が続いた。
道具の一つであるとおもっていた藍が、元気にがんばって染めてくれることに、愛を感じた。
自分と藍がひとつになっていった。
いい藍が答えてくれるようになってきた。
藍と愛の始まりだった。

お客様から届いた糸を注文された色に染め上げる、糸染め。
これが、紺屋の主な仕事。 最近は、自分の好きなものを、好きなように染めたいと布染めも始めた。 頭に巻いた手ぬぐいもそのひとつ。
自分が使いたいと思うもの、染め・デザインを考えテキスタイルを生んでゆく。
ワクワクする仕事と楽しそうに話した。

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糸染めを見せてもらった。
竹の棒に輪にした糸を通し、藍釜につける。
数十秒後、釜からあげると糸は緑色。
棒をねじって液をきり、引き上げると少しづつ緑から青に変化している。
酸化で色が発色するそうだ。

藍液につける回数で、淡い青から黒い青まで何段階もの色がある。
最近は、薄い青も人気だそうだ。
藍釜のある染め場は、そのふたも竹の棒も、明治から何も変わっていないようだ。
コンクリートの床は、藍液で青に染まっている。
この場は空気も時間もタイムスリップしたように錯覚してしまう。

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ワクワクする仕事のひとつ、「藍染め教室」がある。
手ぬぐいたTシャツなど、藍染め体験ができる。
最近は、インバウンド効果なのか、外国人も参加するという。
オーストラリアから13人の団体さんがやってきたそうだ。
SNSで調べてきたという。
彼らのSNSには、ジャパンブルーの染め体験の楽しさと様子が、そして、彼の英語はへただったけれどね・・・とね。
藍染め教室は、予約すればできるようですよ。

染め場の奥の織り機には、素敵な縞が織りの途中だった。
尚さんの父親が主に織っている。 着物一反、12メートル織るのに、どのくらいの時間がかかるだろうか。
織りあがったものは、京都に送っているという。 素敵な着物になりますでしょうね。

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天野 尚さんには、三人の男の子がいる。
最近、長男が「僕も お父さんのお仕事するよ」と 言い出したそうだ。
6代目の誕生ですかね。
藍と愛、天野 尚さんがつらぬく職人魂だった。

天野 尚さん
天野紺屋

幼少の頃から藍色を身近に感じながら育つ。 京都の成安造形短期大学で染め織りを専攻し、帰省後 祖父 圭 のもと藍の染め、管理を学ぶ。糸染め専門の紺屋ながら布染めに興味を持ち、布染色の本を先生に試行錯誤を繰り返し「藍型染め」を始める。

所在地 〒692-0404 島根県安来市広瀬町広瀬968
電話 0854-32-3384
URL https://www.amanokouya.com/
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